NAYA

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#25 2008/03/02 22:25

【text】補給の代償

 各方面から「続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン」と煽られたので、NAYA - 枯渇と補給の、ちょっとした続き。もう続きません。

 注意事項。原則ロアルカですけど、同じくらいにトゥルーリーワース家の擬似三兄弟萌えの気も多大にあるので、広い心で受け止めてやってください。

続き

 何が悪かったんだろう、とひっそりため息する。

 怪我をして入院した同僚の穴埋めを担当したくせに、今度は自分が倒れてしまった不甲斐なさだろうか。
 一日休暇をもらったくせに、何か足りないような気がして落ち着かなくて、食事もせずに浅い眠りを繰り返して、満足に休養も取れなかった不摂生さだろうか。
 緊急のコールが入っていたことに気づいて、確かにまだ熱はあるようだったが前日よりはずっとましになっていると主張し、隊長の反対を押し切って任務に参加した判断が悪かったんだろうか。
 最初に任された屋内での後方支援や救援は手が足りていたようなので、当初の指示を無視して雨が降る屋外での撤去作業に参加したことだろうか。
 「お前、顔が死んでるぞ」と帰り道に同僚が話しかけてきて、途端にそうだそうだと周囲がはやし立てて、「お前バカだよなー」と苦笑いされて周囲から羽交い絞めにされて髪をぐしゃぐしゃにされたのが、緊張感がないと思われて勤務態度に響いたんだろうか。
 同行していたレーヴァテイルの同僚から傘を貸してくれようとしていたが、それが不謹慎に見えたんだろうか。家がすぐそこだから、とそれは丁寧に断ったはずだが。
 家に着いたらルカがいて――実を言うとそこから先の記憶が曖昧だ――とりあえず気が付いたら朝になっていて、その上寝台の上でルカと一緒に横になっていて、固まって――不思議とルカを抱きしめるような形で眠っていたので、ルカが動かないと動けないという体勢でもあったんだが――いるうちにルカが起きて、人の顔を見るなり真っ赤になってうつむいて――そこで「……おはよ」と言う姿がかわいかったのでよく覚えている――昨日のことはよく覚えていないと言ったら、赤い顔が青くなってその次にひどく落胆したような顔を見せてちょっと涙ぐまれたのは、本当に何が悪かったのかわからない。
 久しぶりによく眠れたのか、起きあがると体調もほぼ万全だったのは唯一の拾い物だろうか。

 朝一番にクローシェ様直々に、こちらの体調を気遣う連絡が入電して、昨日の報告を行っていると、横にいたルカがくしゃみをした。
 見ると、顔が赤く、目も充血して、頭をフラフラさせている。思わず声を上げてしまい、それを聞いてテレモの向こうで声色を変えたクローシェ様に問い詰められ、焦った頭でおぼろな昨晩の記憶からかいつまんで――家に戻るとルカがいて、気が付いたら寝台に寝かされて、その横にルカもいたという程度の説明だ――昨晩の様子を報告すると、奇妙なくらいに長い無言の間が続き、地の底から響くような声で「……今すぐ、ルカをつれて宮殿に来なさい」とだけ告げられた。
 言われたとおりに真っ先に連れて行くと、抱きかかえていたルカはあっという間に侍女たちに連れ去られ、自分は執務室に通され部屋の中央にぽつんと置かれた椅子に座らされて、今に至る。
 その後ずいぶん長いこと待たされた。そのうちルカの容態を見ていたであろうクローシェ様が執務室に戻られ、腰を上げて挨拶しようとする口を開く前に、言葉もなくにらまれた。今はこちらに背を向け、腕を組みながら窓の外を凝視して立ち尽くしている。その背中からはを何故か無言の圧力を感じる。断罪を待つ罪人の気分とはこんなものだろうか。
「……ルカに、クロアは悪くないって、涙目で言われたわ……」
 これまで一度も耳にしたことがないような低い声。顔を上げると、クローシェ様が腰に差した剣の柄が、窓から差し込む光を受けてぎらりと輝く。

 何が悪かったんだろう、とひっそり二度目のため息する。

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